リーサル・ウェポン (1987)の解説・評価・レビュー

Lethal Weapon ポリスアクション
ポリスアクション刑事ドラマ

正反対の二人が仕掛ける、銃弾と信頼のバディ・アクション ---

『リーサル・ウェポン』は、1987年に公開されたリチャード・ドナー監督によるアクション映画。主演はメル・ギブソン、共演にダニー・グローヴァー。物語はロサンゼルス市警に所属する刑事マーティン・リッグスとロジャー・マータフの二人が、麻薬密輸組織を追う中で相棒として信頼を築いていく過程を描く。自暴自棄で破天荒なリッグスと、家族を大切にする穏健なマータフという正反対の性格の対比が作品の軸となり、激しいアクションに加えて心理的な深みも持たせている点が特徴である。脚本を手がけたのは、当時新人であったシェーン・ブラック。彼のユーモアと暴力描写を織り交ぜた構成は注目され、後のアクション映画のスタイルに影響を与えた。監督のドナーは『スーパーマン』(1978)や『オーメン』(1976)で知られ、本作でも緊張感と娯楽性のバランスを巧みに演出した。

公開後は批評的にも興行的にも成功を収め、全世界で約1億2,000万ドル(当時のレートで約175億円)の興収を記録。シリーズは続編4作とテレビドラマ版へと展開し、ギブソンとグローヴァーの名コンビは映画史に刻まれる存在となった。バディ・アクションというジャンルを確立した先駆的な作品として、今日でも広く参照されている。

『リーサル・ウェポン』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


ロサンゼルス市警の刑事ロジャー・マータフ(ダニー・グローヴァー)は、50歳の誕生日を迎えたばかりのベテラン警官。家庭を愛し安定した生活を望む彼は、できるだけ穏便に仕事をこなそうと考えていた。しかし、新しい相棒として配属されたのは元特殊部隊のマーティン・リッグス(メル・ギブソン)。彼は妻を亡くした悲しみから自暴自棄となり、危険を顧みない無鉄砲な捜査を繰り広げる刑事だった。

性格も価値観も正反対の二人は、最初こそ互いに反発し合うものの、ある事件をきっかけに協力を余儀なくされる。マータフは、ベトナム戦争時代の旧友であるマイケル・ハンサカー(トム・アトキンス)から、娘アマンダの不審な死の調査を依頼される。捜査を進めるうちに、彼女の死が単なる事故ではなく、強大な麻薬密売組織と関係していることが判明する。

やがて、リッグスとマータフは、軍の元特殊部隊員たちが関与する巨大な麻薬密輸ネットワークに迫ることとなる。しかし、組織のリーダーであるジョシュア(ゲイリー・ビジー)とマクアリスター将軍(ミッチェル・ライアン)は、二人の動きを察知し、容赦ない攻撃を仕掛けてくる。激しい銃撃戦やカーチェイスを経て、リッグスとマータフは命懸けの戦いに挑むこととなる。
次第に互いを信頼し始めた二人は、強敵に立ち向かいながら、事件の核心へと迫っていく。果たして、彼らは麻薬組織を壊滅させ、正義を貫くことができるのか――?

『リーサル・ウェポン』の監督・主要キャスト

  • リチャード・ドナー(57)監督
  • メル・ギブソン(31)マーティン・リッグス
  • ダニー・グローヴァー(40)ロジャー・マータフ
  • ゲイリー・ビジー(42)ジョシュア
  • ミッチェル・ライアン(53)マクアリスター将軍
  • トム・アトキンス(51)マイケル・ハンサカー
  • ダーレン・ラヴ(39)トリッシュ・マータフ
  • トレイシー・ウルフ(17)リアン・マータフ

(年齢は映画公開当時のもの)

『リーサル・ウェポン』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 5.0 ★★★★★
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 2.0 ★★☆☆☆
・王道!バディームービー 5.0 ★★★★★
・CGじゃないアクション 4.0 ★★★★☆

ポジティブ評価

『リーサル・ウェポン』は、アクション映画の枠を超えた刑事バディムービーの代表作であり、今なお多くのファンに愛され続ける作品である。本作が特に評価されるポイントは、派手なアクションと緊迫感あふれるストーリーに加え、メル・ギブソンとダニー・グローヴァーが演じる二人の刑事の対照的なキャラクター設定と、その関係性の変化にある。
本作の最大の魅力は、やはりマーティン・リッグス(メル・ギブソン)とロジャー・マータフ(ダニー・グローヴァー)のコンビネーションだ。リッグスは命知らずの型破りな刑事で、破天荒な行動を繰り返す一方、マータフは家庭を大切にする生真面目なベテラン刑事。この二人の掛け合いが絶妙であり、最初は衝突しながらも次第に信頼を深めていく過程が、映画の大きな見どころとなっている。

アクション映画としての完成度も高く、銃撃戦、カーチェイス、肉弾戦といった多彩なアクションシーンが展開される。銃撃戦の演出もリアルで、1980年代のアクション映画らしい迫力を存分に楽しめる。
脚本を手掛けたシェーン・ブラックのセンスも光る。彼は後に『ラスト・ボーイスカウト』(1991)や『キスキス, バンバン』(2005)などの脚本も担当し、独特のウィットに富んだ会話や、シリアスな展開とユーモアのバランス感覚に定評がある。本作においても、重いテーマを扱いながらもコミカルな要素が随所に散りばめられており、単なるアクション映画に終わらない魅力を生み出している。

『リーサル・ウェポン』は、単なる刑事アクション映画ではなく、キャラクターの心理描写や二人の関係性に重点を置いたことでエンタメ性が増し、後のバディムービーの教科書となった。アクション映画史に残る傑作として今なお高く評価されている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

本作の特徴でもある「バディムービー」としての要素は魅力的だが、ストーリー自体は比較的シンプルで、特に後半はオーソドックスなアクション映画の展開に収束していく。派手なアクションやカーチェイスを楽しめる一方で、サスペンス的な要素や捻りのあるストーリーを求める視聴者にとっては物足りなさを感じる可能性がある。麻薬組織の陰謀という設定や敵役のキャラクターがややステレオタイプ。

つまり良くも悪くも日曜映画劇場的な映画。ストーリーの単純さや、一部の演出の過剰さが気になる視聴者もいるかもしれないが、悪意なく、皆が楽しめる80年代らしい派出なエンターテインメント作品なのである。

こぼれ話

『リーサル・ウェポン』は、80年代を代表するアクション映画として知られているが、その制作の裏側には興味深いエピソードが数多く存在する。特に、キャスティングに関する逸話は面白く、もし当初の候補が採用されていたら、全く違った映画になっていたかもしれない。
主人公マーティン・リッグス役には、当初、ブルース・ウィリスやカート・ラッセルといった俳優が候補に挙がっていた。しかし、最終的に選ばれたのは、当時『マッドマックス』シリーズで人気を博していたメル・ギブソンだった。結果として、彼の鋭い眼差しと爆発的な演技が、リッグスの危うさと人間味を見事に表現することとなった。一方で、ロジャー・マータフ役には、ダニー・グローヴァーのほかにバート・レイノルズやクリント・イーストウッドといった名前も挙がっていたが、マータフを「家族を大切にする刑事」として描くにあたり、グローヴァーの包容力のある演技が決め手となったという。

また、本作は脚本家シェーン・ブラックのキャリアを決定づけた作品でもある。ブラックは当時20代前半でありながら、独特のユーモアとスリルを兼ね備えた脚本を執筆し、後の『ラスト・ボーイスカウト』や『アイアンマン3』などでその才能を発揮することになる。特に、『リーサル・ウェポン』におけるリッグスとマータフの掛け合いは、以降のバディムービーのテンプレートを確立したと言われている。

アクションシーンに関しても、本作はリアルな演出にこだわった。リッグスが犯人を屋上から飛び降りて制圧するシーンでは、メル・ギブソン本人がスタントを行い、監督のリチャード・ドナーを驚かせた。また、クライマックスのリッグスとジョシュアの格闘シーンは、撮影当時に振り付けが決まっていなかったため、ほぼ即興で撮影されたという。これにより、より生々しい格闘のリアリティが生まれることとなった。

本作には、シリーズ化を見越した要素はなかったものの、公開後の大ヒットを受け、続編が制作されることが決定した。1989年の『リーサル・ウェポン2』では、よりユーモラスなバディ要素が強化され、1992年の『リーサル・ウェポン3』ではリッグスとマータフの関係がさらに深まる展開が描かれた。そして、1998年の『リーサル・ウェポン4』では、新たにジェット・リーが敵役として登場し、シリーズの集大成とも言える作品となった。さらに、2016年にはテレビドラマ版も制作され、リッグスとマータフのコンビは世代を超えて愛され続けている。

『リーサル・ウェポン』は、単なるアクション映画にとどまらず、キャラクターの個性や関係性を重視したことで、長年にわたり支持される作品となった。もし本作を改めて観る機会があれば、単なる刑事ドラマとしてではなく、バディムービーの元祖としての側面にも注目してみると、新たな発見があるかもしれない。

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