メディア狂騒と暴力が交差する衝撃の犯罪ドラマ ---
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(原題:Natural Born Killers)は、1994年に公開されたアメリカのクライム・アクション映画で、オリバー・ストーンが監督を務めた。クエンティン・タランティーノの原案を基に、メディアと暴力の関係を強烈に風刺した作品であり、ウディ・ハレルソンとジュリエット・ルイスが主演を務める。物語は、殺人を繰り返しながら逃亡するカップル、ミッキーとマロリーが、メディアによって「犯罪者スター」として祭り上げられる過程を描く。
本作は、過激な映像表現や独特の編集技法が特徴で、16mmやビデオ映像を織り交ぜたカオスな映像スタイルが話題を呼んだ。公開当時、その暴力描写とメディア批判の内容が物議を醸し、各国で上映規制やカット版の公開を余儀なくされた。それにもかかわらず、全世界で5,000万ドル(当時のレートで約50億円)以上の興行収入を記録しインパクトを残した。
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
ミッキーとマロリー・ノックスは、運命的に出会った若いカップル。しかし、彼らは単なる恋人同士ではなく、衝動的に殺人を繰り返しながらアメリカを旅する無法者だった。彼らの残忍な犯行はメディアに大きく取り上げられ、「カリスマ的な犯罪者」として世間の注目を集める。
警察の追跡をかわしながら殺人を続ける二人だったが、ついに逮捕され、刑務所へと収監される。しかし、ミッキーとマロリーの人気は衰えることなく、彼らを特集するテレビ番組が組まれるほどの社会現象となる。そして、彼らの取材を試みる野心的なジャーナリスト、ウェイン・ゲールが登場したことで、物語はさらに過激な展開へと突き進んでいくのだった。
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』の監督・主要キャスト
- オリバー・ストーン(48)監督
- ウディ・ハレルソン(33)ミッキー・ノックス
- ジュリエット・ルイス(21)マロリー・ノックス
- ロバート・ダウニー・Jr.(29)ウェイン・ゲール
- トミー・リー・ジョーンズ(48)ドワイト・マクラスキー
- トム・サイズモア(32)ジャック・スキャグネッティ
- ロドニー・デンジャーフィールド(72)エド・ウィルソン
- エディ・マックラーグ(43)マロリーの母親
(年齢は映画公開当時のもの)
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 2.0 ★★☆☆☆ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 4.0 ★★★★☆ |
・実験的な映像表現 | 4.0 ★★★★☆ |
・模倣犯が現れた問題作 | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』は、オリバー・ストーン監督による過激な映像表現をベースに強烈なメディア批判を行った、異色のクライム映画である。16mmフィルム、ビデオ映像、アニメーションなど多様な映像技法を組み合わせることで、まるで悪夢のようなカオスな世界観を作り出している。カット割りの速さや極端な色彩の使い方は、視聴者に常に不安定な感覚を与える。
ミッキーとマロリーは、愛と狂気が交錯する複雑なキャラクター。道徳観の欠如した冷酷な殺人者でありながら魅力を放ち、視聴者をくぎ付けにする。特に、ジュリエット・ルイスの奔放で攻撃的な演技は、彼女のキャリアの中でも屈指のインパクトがある。
「メディアが犯罪者をいかに偶像化し、視聴者を扇動するのか」という鋭いテーマ持つこの作品。ロバート・ダウニー・Jr.演じるジャーナリストのウェイン・ゲールは、視聴率のためなら倫理を無視し、ミッキーとマロリーをセンセーショナルに報道する。社会風刺として成立している点も本作の魅力である。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
編集スタイルが極端に実験的で、16mmフィルム、ビデオ、アニメーションなどが目まぐるしく切り替わる。このカオスな映像演出は映画のテーマを際立たせる効果があるが、情報量が多すぎて疲れると感じる人もいるかもしれない。落ち着いた映画を好む視聴者にとっては過剰な演出に感じられる可能性がある。
ストーリー面において、ミッキーとマロリーは冷酷な連続殺人犯であり、道徳的な葛藤がほとんど描かれない。「アンチヒーロー映画」として楽しめるかどうかは、視聴者の好みによる部分が大きい。
「メディアが暴力を娯楽として消費する」という風刺を徹底しているが、その皮肉が「結局、映画自体が暴力を娯楽として利用しているのでは?」という矛盾を感じる人もいるかもしれない。
こぼれ話
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』は、クエンティン・タランティーノが脚本を執筆し、オリバー・ストーンが監督した異色のバイオレンス映画だが、実はタランティーノは完成版にあまり満足していなかったという。彼のオリジナル脚本は、よりシンプルな犯罪映画だったが、ストーンが大胆な映像表現と社会風刺を加えたことで、まったく別の作品に変貌。結果的にタランティーノは自分の名前を脚本クレジットから外すよう要求し、公式には「原案」としてクレジットされることになった。
撮影中、主演のウディ・ハレルソンは、より狂気じみた演技を求めるオリバー・ストーンの指示に応えるため、意識的に寝不足の状態で撮影に挑んだという。彼の鋭い目つきや異様なテンションは、こうした準備の賜物だったのかもしれない。一方で、ジュリエット・ルイスも役に入り込みすぎたのか、あるシーンでは本当にウディ・ハレルソンに殴りかかってしまい、ストーン監督が慌てて撮影を止めたというエピソードもある。狂気がリアルに見えるのも頷ける。
過激な描写が多く、公開当時多くの議論を巻き起こした。実際に、複数の犯罪者が本作からインスピレーションを受けたとされる事件が発生し、一部の国では上映禁止や規制がかけられたほどである。とはいえ、ストーン監督は「映画のせいで人が暴力を振るうなら、それはすでに暴力的な社会に生きている証拠だ」と反論。まさに、映画のテーマそのものを象徴するような議論となった。
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