若きディカプリオによる異色のロミジュリ ---
1996年公開の『ロミオ+ジュリエット』(原題: Romeo + Juliet)は、バズ・ラーマン監督が手がけたシェイクスピアの悲劇『ロミオとジュリエット』の現代版リメイク作品。原作の台詞をそのまま使用しながらも、舞台を架空の都市“ヴェローナ・ビーチ”に移し、銃や派手な衣装、ポップカルチャーを取り入れた大胆な演出が特徴で、主演のレオナルド・ディカプリオ(ロミオ)とクレア・デインズ(ジュリエット)の瑞々しい演技が話題を呼んだ。シェイクスピア劇を現代の若者向けに再構築した斬新なスタイルとして評価されている。
興行的には、全世界で約1億4,700万ドル(当時のレートで約140億円)の興行収入を記録。レオナルド・ディカプリオは本作により、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞。当時22歳の彼にとって、後の『タイタニック』(1997年)でのブレイクへとつながる重要な作品となった。
『ロミオ+ジュリエット』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
ヴェローナ・ビーチは、二大財閥「モンタギュー家」と「キャピュレット家」の抗争が絶えない都市。モンタギュー家の息子ロミオ(レオナルド・ディカプリオ)は、仲間たちと共にキャピュレット家のパーティーに忍び込み、そこで運命の女性ジュリエット(クレア・デインズ)と出会う。互いに惹かれ合う二人だったが、彼らの恋は両家の長年の確執によって許されるものではなかった。
密かに愛を育み、神父ローレンスの協力を得て結婚を誓うロミオとジュリエット。しかし、運命は二人を容赦なく翻弄し、街の抗争はさらに激化。彼らの愛を阻む障害は次々と立ちはだかり、悲劇的な結末へと向かっていく——。
『ロミオ+ジュリエット』の監督・主要キャスト
- バズ・ラーマン(34)監督
- レオナルド・ディカプリオ(22)ロミオ・モンタギュー
- クレア・デインズ(17)ジュリエット・キャピュレット
- ジョン・レグイザモ(32)ティボルト
- ハロルド・ペリノー(33)マキューシオ
- ピート・ポスルスウェイト(51)ローレンス神父
- ポール・ソルヴィノ(57)フルヘンシオ・キャピュレット
- ダイアン・ヴェノーラ(44)グロリア・キャピュレット
(年齢は映画公開当時のもの)
『ロミオ+ジュリエット』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 5.0 ★★★★★ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・現代版ロミジュリ | 5.0 ★★★★★ |
・駆け出しのクレア・デインズ | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『ロミオ+ジュリエット』は、シェイクスピアの名作を単なる古典の映画化ではなく、ポップでスタイリッシュな青春映画として成立させている。ガンアクションやネオン輝く都会の風景を背景に繰り広げられるドラマは、シェイクスピアの時代にはなかった新たな魅力を引き出している。
この時期、すでにスターへの道を歩み始めていたレオナルド・ディカプリオは、繊細さと激情を兼ね備えたロミオを魅力的に演じた。憂いを帯びた表情や真っ直ぐな愛情表現が視聴者の共感を誘う。一方、クレア・デインズは、無邪気ながらも強い意志を持つジュリエットを瑞々しく演じ、ロミオとの純愛がより際立つ形になっている。二人のケミストリーは抜群であり、特にバルコニーシーンやプールでのロマンチックな場面は、まさに名シーンといえるだろう。
また、本作の大きな特徴が、シェイクスピアの原文をそのまま使用している点だ。現代の若者文化と融合させることで、「古典劇=難しい」という印象を払拭し、リズミカルでテンポの良いセリフ回しが新鮮な魅力を生み出している。加えて、ガソリンスタンドでの決闘シーンや、派手な衣装と豪華な音楽を使った演出は、伝統的な『ロミオとジュリエット』とは一線を画す独創性を感じさせる。
『ロミオ+ジュリエット』は、シェイクスピア劇に馴染みのない視聴者にも楽しめるエンターテインメント作品でありながら、原作のエッセンスを損なわないバランスの取れた映画といえる。もし、「シェイクスピアは難しそう…」と敬遠していたなら、本作がそのイメージを一新するきっかけになるかもしれない。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
本作の特徴である「原作の台詞をそのまま使用しつつ、舞台を現代に置き換える」というスタイルが一部視聴者には違和感を与える。原作さながらに派手な衣装を身にまとい、剣の代わりに銃を持ち、詩的なセリフ回しで展開する光景がクールに見えるか、不自然に感じるかは人それぞれ。シェイクスピアに馴染みのない人が純粋な恋愛ドラマとして視聴すると面食らうかもしれない。
世界のネットを見渡してみると、英文サイトの古典的なシェイクスピアを愛する人々の中には怒り出す人もいた。主人公ふたりの瑞々しさに反して、演出面では挑戦的な作品なのである。
こぼれ話
主演のレオナルド・ディカプリオは、本作の撮影時点でまだハリウッドの若手スターだったが、本作での演技が評価され、翌年の『タイタニック』(1997年)で世界的ブレイクを果たすことになる。彼は当時、他の仕事で海外にいたため、ラーマン監督はディカプリオのためにオーストラリアまで飛び、ホテルの一室でオーディションを行ったという。その際、監督は「この男こそロミオだ」と確信したらしい。
一方で、ジュリエット役のクレア・デインズは、当初はまだ無名に近い存在だったが、ディカプリオとの相性の良さと、純粋さと強さを兼ね備えた演技が決め手となり、大抜擢された。しかし、撮影現場ではディカプリオとあまり親しくなかったと言われており、クレアは後に「彼は素晴らしい俳優だけど、現場ではちょっと子どもっぽかった」と語っている。
ラーマン監督は「シェイクスピア劇を退屈なものにしない」という信念のもと、クラシックな演劇表現ではなく、90年代のポップカルチャーと融合させることを目指した。そのため、映画の舞台となる“ヴェローナ・ビーチ”は、実際にメキシコで撮影され、カラフルなセットや派手な衣装が独特の雰囲気を作り出している。また、劇中に登場する「剣」ではなく「SWORD(銃のブランド名)」と書かれたピストルは、伝統と現代性を融合させるユーモラスな演出のひとつとして注目された。
『ロミオ+ジュリエット』は、伝統的なシェイクスピア劇に大胆なアレンジを加えたことで、当時は賛否両論を巻き起こしたが、現在では“異色のロミジュリ”として根強い人気を誇る。もし視聴するなら、細部にちりばめられた製作者の創意工夫を探しながら楽しんでみるのも面白いかもしれない。
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