恋におちたシェイクスピア (1998)の解説・評価・レビュー

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1998年公開の『恋におちたシェイクスピア』(原題:Shakespeare in Love)は、ジョン・マッデン監督が手掛けた歴史ロマンティックコメディで、若き日のウィリアム・シェイクスピアが体験する恋愛と創作の苦悩を描いたフィクション作品。脚本はトム・ストッパードとマーク・ノーマンが担当し、当時絶大な人気を誇ったグウィネス・パルトローとジョセフ・ファインズが主演を務めた。

物語は、劇作家として名を馳せる前のシェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)がスランプに陥り、新作『ロミオとジュリエット』の執筆に行き詰まる中、美しい貴族の娘ヴァイオラ(グウィネス・パルトロー)と出会い、恋に落ちることから始まる。身分や性別の制約を超えた恋愛が、彼の創作に新たなインスピレーションを与える様子がドラマチックに描かれる。

本作は、1999年のアカデミー賞で作品賞を含む7部門を受賞し、特にグウィネス・パルトローは主演女優賞に輝いた。歴史的背景とフィクションを巧みに融合させたストーリーと豪華な衣装、舞台セットが高く評価され、興行収入も全世界で約2億8,900万ドル(当時のレートで約380億円)を記録。シェイクスピア作品へのオマージュと、創作の苦悩をユーモラスに描いた感動的な名作である。

『恋におちたシェイクスピア』のあらすじ紹介(ネタバレなし)

16世紀末のロンドン。若き劇作家ウィリアム・シェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)は、新作戯曲『ロミオとジュリエット』の執筆を進めていたが、創作のスランプに陥っていた。劇団の運営者からは完成を急かされ、生活は困窮状態に陥る中、偶然出会った美しい貴族の娘ヴァイオラ・デ・レセップス(グウィネス・パルトロー)と恋に落ちる。
一方で、ヴァイオラは両親の決めた婚約者との結婚を控えていたが、心から愛する相手はシェイクスピアただ一人だった。当時の演劇界では女性が舞台に立つことが禁じられていたが、ヴァイオラは男装してシェイクスピアの劇団に加わり、彼の新作で主役を演じることになる。彼女の情熱と才能が、シェイクスピアの創作に新たなインスピレーションを与え、『ロミオとジュリエット』が少しずつ完成に近づいていく。

身分や社会的な制約が二人の恋愛に影を落とし、劇場上演が迫る中、禁じられた愛は彼の作品にどのような形で昇華されるのか――。創作の苦悩と身分の違いを超えた恋愛が交錯する、切なくもロマンティックな物語である。

『恋におちたシェイクスピア』の監督・主要キャスト

  • ジョン・マッデン(49)監督
  • ジョセフ・ファインズ(28)ウィリアム・シェイクスピア
  • グウィネス・パルトロー(26)ヴァイオラ・デ・レセップス
  • ジェフリー・ラッシュ(47)フィリップ・ヘンズロー
  • トム・ウィルキンソン(50)ヒュー・フェンマン
  • コリン・ファース(38)ウェセックス卿
  • ジュディ・デンチ(63)エリザベス女王
  • ベン・アフレック(26)ネッド・アレイン

(年齢は映画公開当時のもの)

『恋におちたシェイクスピア』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 4.0 ★★★★☆
・大切な人と観たい 5.0 ★★★★★
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・歴史的人物のifストーリー 5.0 ★★★★★
・演劇好きにはたまらない舞台要素 4.0 ★★★★☆

ポジティブ評価

『恋におちたシェイクスピア』は、ロマンティックな物語とウィットに富んだ脚本、そして豪華なビジュアルが見事に融合した作品。シェイクスピアの創作の苦悩やヴァイオラとの禁じられた恋愛が、二人の息の合った演技によって感情豊かに描かれる。グウィネス・パルトローはヴァイオラの情熱的で自由なキャラクターを体現したこの役でアカデミー賞主演女優賞を受賞した。

本作の魅力はその脚本にもある。トム・ストッパードとマーク・ノーマンによる脚本は、シェイクスピアの戯曲や演劇界へのオマージュが散りばめられており、劇中で繰り広げられる数々のセリフやシーンには、シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』をはじめとする作品の要素が巧みに取り込まれている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

ネットに溢れる『恋におちたシェイクスピア』への低評価は、主にミラマックス社(同作品の制作会社)と代表のハーヴェイ・ワインスタイン氏に対する批判。いわゆる”ワインスタイン事件”が明るみになったことによって、アカデミー作品賞の受賞過程に過剰接待が行われたのではないかという邪推が付きまとい、20年前の作品に対する評価を汚してしまっている。同じ年にアカデミー賞を競った『プレイべート・ライアン』が受賞を逃したことへの不満も含まれているかもしれない。

逆にいえば、『恋におちたシェイクスピア』という作品そのものに対する批判はほとんど見られず、良質なラブストーリーであることに違いない。

こぼれ話

『恋におちたシェイクスピア』のヴァイオラ役でアカデミー賞主演女優賞を受賞したグウィネス・パルトローは、当初この役を辞退していた。その後ジュリア・ロバーツがキャスティングされており、ジョニー・デップとの共演が計画されていたが、スケジュールの都合や制作側の変更により最終的に降板。結果的にパルトローが復帰し、この役が彼女のキャリアを大きく飛躍させるきっかけとなった。

またエリザベス女王を演じたジュディ・デンチは、わずか8分間の出演ながら視聴者を魅了し、アカデミー賞助演女優賞を受賞するという快挙を成し遂げた。デンチは、「少ない時間で最大のインパクトを与える方法」を見せつける形となった。

本作は、公開後のアカデミー賞で7部門を受賞したものの、同じ年に公開された『プライベート・ライアン』との賞争いが議論を呼んだ。「史上最も物議を醸した」と表現する批評家もいる。

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