1990年代カーアクションの代表作 ---
『スピード』(原題:Speed)は、1994年に公開されたアメリカのアクション映画で、ヤン・デ・ボンが監督を務めた。主演はキアヌ・リーブスとサンドラ・ブロック。物語は、ロサンゼルス市内を走るバスに「時速50マイル(約80km/h)以下になると爆発する爆弾」が仕掛けられ、SWAT隊員ジャックが乗客とともに絶体絶命の状況に立ち向かうというスリリングな展開が特徴。
公開当時、その息もつかせぬアクションと緊迫感あふれるストーリーが高く評価され、全世界で3億5,000万ドル(当時のレートで約350億円)以上の興行収入を記録。製作費3,000万ドル(30億円)という比較的低予算ながら大ヒットとなった。アカデミー賞では編集賞と音響賞を受賞し、90年代アクション映画の代表作として今なお人気を誇る。
『スピード』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
ロサンゼルス市警のSWAT隊員ジャック・トラヴェン(キアヌ・リーブス)は、冷酷な爆弾魔ハワード・ペイン(デニス・ホッパー)によるエレベーター爆破事件を阻止したことで、犯人の恨みを買う。数日後、ペインは新たな計画として、市内を走るバスに爆弾を仕掛ける。時速50マイル(約80km)を下回ると爆発するという過酷な条件のもと、ジャックは現場へ急行し、混乱するバスの中で爆弾解除を試みる。
乗客の一人であるアニー(サンドラ・ブロック)が運転を引き継ぎ、ジャックと協力しながらバスを爆発させずに走らせ続ける。しかし、市街地の渋滞や未完成の高速道路といった数々の障害が立ちはだかる。ペインの真の狙いが明らかになる中、ジャックとアニーは乗客を救うため決死の戦いを繰り広げる。
『スピード』の監督・主要キャスト
- ヤン・デ・ボン(51)監督
- キアヌ・リーブス(30)ジャック・トラヴェン
- サンドラ・ブロック(30)アニー・ポーター
- デニス・ホッパー(58)ハワード・ペイン
- ジェフ・ダニエルズ(39)ハリー・テンプル
- ジョー・モートン(46)ハーブ・マクマホン
- アラン・ラック(38)スティーヴンス
- グレン・プラマー(28)ジャガーの持ち主
(年齢は映画公開当時のもの)
『スピード』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・王道カーアクション | 5.0 ★★★★★ |
・マッチョすぎないヒーロー像! | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『スピード』は、90年代のアクション映画の中でも特に緊張感のある作品として知られ、そのシンプルながら効果的な設定がスリリング。何と言っても「時速50マイルを下回ると爆発するバス」というアイデアが秀逸で、序盤から終盤までノンストップのスリルを生み出している。この限られた空間の中で展開されるアクションは、派手な爆破や銃撃戦に頼らずとも、手に汗握る緊迫感を維持することに成功している。舞台がバスという限られた環境でありながら、単調にならず、次々と予想外の展開が繰り広げられるため、最後まで飽きることなく楽しめる。
キアヌ・リーブスは、派手なヒーローではなく、現場で奮闘するリアルなSWAT隊員として演技。筋肉隆々のアクションスターというより、冷静で機敏なプロフェッショナルとしての佇まいが、本作のスリルをより現実的なものにしている。サンドラ・ブロックの親しみやすいヒロイン像も見事。機転と勇気を示し、作品に華を添えた。ベテラン・デニスホッパーも狡猾な犯人役で存在感を放った。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『スピード』は、息をつかせぬノンストップアクション。言い換えると、ほぼ全編がアクションで展開する。エレベーター、市街地でのカーチェイス、地下鉄と、場所を変えながら休む間もなくスタントが続くアクション好きにはたまらない映画で、反対に謎解きサスペンスを求めるとちょっと違う。その日の気分によって良くも悪くも映るので、内容を確かめてから視聴を始めたい。
ただ、アクション映画の歴代ランキングでも人気上位の常連作品のため、お勧めの一作である。
プロットにあえてツッコミを入れると、犯人ペインの動機や計画には少々粗があり、知能犯として描かれながらも詰めの甘さが目立つ。リアリティを求めると「意外と単純な計画では?」と思えてしまうこの役どころは、デニス・ホッパーの怪演で補われている。
こぼれ話
本作の脚本はもともと『ダイ・ハード』の影響を受けたものだったという。実際に、製作会社は『ダイ・ハード』の第3作として検討していたが、最終的に独立した作品として制作されることになった。その結果、「高層ビルの次はバスで!」という斬新なコンセプトが生まれたのだった。
主演のキアヌ・リーブスは、本作のアクションシーンの多くを自ら演じている。特にバスに飛び乗るシーンなどは、スタントダブルを使わずに挑戦しており、監督のヤン・デ・ボンも彼のプロ意識に驚いたという。ちなみに、キアヌは役作りのために髪を短く刈り込んだが、勘違いでスキンヘッドでクランクインしたため髪が伸びるまで撮影を待ったというエピソードも。結果的に、この短髪スタイルはジャック・トラヴェンのクールなキャラクターを際立たせる要素となった。
ヒロインであるサンドラ・ブロックは、実はこの映画のオーディションで実際にバスの運転技術をテストされている。彼女は見事にクリアし、撮影中も自らバスを運転するシーンが多かったとか。ちなみに、彼女が演じたアニーのキャラクターは、当初もっとおとなしめの設定だったが、サンドラ・ブロックの快活なイメージに合わせて脚本が変更されたという。
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