『スター・トレック』(原題:Star Trek)は、2009年に公開されたSF映画で、J・J・エイブラムス(42)監督が手掛けたリブート作品。1960年代に始まった伝説的テレビシリーズを現代の技術と感性で再構築し、新たな世代の観客にも訴求することを目指した。物語は、U.S.S.エンタープライズ号の若き乗組員たちが初めての冒険に挑む姿を描く。主演のクリス・パインは、カーク船長役を大胆かつ軽快に演じ、ザカリー・クイントが冷静なバルカン人スポック役として強い印象を残した。
敵役にはエリック・バナが登場し、復讐に燃えるロミュラン人ネロを演じた。タイムトラベルをテーマにした物語は、過去のシリーズへのオマージュを散りばめつつも、新規ファンにも分かりやすい構成になっている。製作費は約1億5,000万ドルにのぼり、全世界で3億8,500万ドルを超える興行収入を記録した。映像技術や緊迫感あふれるアクションシーンが評価され、第82回アカデミー賞ではメイクアップ賞を受賞。スター・トレックシリーズの新たな出発点として成功を収めた作品である。
『スター・トレック』あらすじ紹介(ネタバレなし)
宇宙探査を目的とする惑星連邦の旗艦、U.S.S.エンタープライズ号。物語は、宇宙の果てからやってきたロミュラン人ネロ(エリック・バナ)が、復讐のために宇宙を破壊しようとするところから始まる。幼い頃に父を失った若きジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)は、反抗的な性格ながらも並外れた才能を持ち、宇宙艦隊に入隊する。
一方、論理を重んじるバルカン人のスポック(ザカリー・クイント)は、人間とバルカン人のハーフとしてアイデンティティに葛藤しながらも、卓越した頭脳で宇宙艦隊のエリートに成長する。そんな二人が、エンタープライズ号で初めて出会い、互いに反発し合いながらも、ネロによる銀河規模の脅威に立ち向かうこととなる。
過去から来た老スポック(レナード・ニモイ)との出会いや、タイムトラベルによる歴史改変が絡み合う中、カークとスポックは対立を乗り越え、エンタープライズ号の乗組員たちとともに宇宙の未来を守るための壮大な戦いに挑む。友情、冒険、そして未知への挑戦を描いた新たな「スター・トレック」の幕開けとなる物語である。
『スター・トレック』の監督・主要キャスト
- J・J・エイブラムス(42)監督
- クリス・パイン(28)ジェームズ・T・カーク
- ザカリー・クイント(32)スポック
- エリック・バナ(41)ネロ
- カール・アーバン(36)レナード・“ボーンズ”・マッコイ
- ゾーイ・サルダナ(30)ウフーラ
- サイモン・ペグ(39)モンゴメリー・“スコッティ”・スコット
- アントン・イェルチン(20)パヴェル・チェコフ
- ジョン・チョー(36)ヒカル・スールー
- レナード・ニモイ(78)老スポック
(年齢は映画公開当時のもの)
『スター・トレック』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 4.0 ★★★★☆ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 4.0 ★★★★☆ |
・王道アドベンチャー | 5.0 ★★★★★ |
・歴史的なシリーズ | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『スター・トレック』は、旧シリーズの精神を継承しつつ、現代的なアプローチで新たな魅力を生み出したリブート作品として高い評価を得ている。監督は、『アルマゲドン』の脚本やドラマシリーズ『LOST』を手掛けたJ・J・エイブラムス監督。彼のヒット請負人としての手腕により、スピード感と緊張感のあるアクションが融合し、初心者でも楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっている。旧シリーズのファンには懐かしさを、新規の視聴者には新鮮さを感じさせる。
映像面でも、近未来的な宇宙船や壮大な宇宙のビジュアルが良く、IMAXや3Dでの上映時にはその迫力が一層際立った。特に、ブラックホールや宇宙戦闘のシーンは息を呑む美しさ。
SFの王道的なこのシリーズは、他の映画やドラマのセリフの中でたびたび引用され、長い歴史と熱いファンに支えられる。SFファンならば一度は視聴したい作品だ。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
ネットの(特にアメリカの)レビューにおいて、リブート作品としてのアプローチに対して批判的な意見が散見される。タイムトラベルによる「歴史改変」が物語全体を過去作と切り離してしまったことへの批判や、従来の『スター・トレック』シリーズが持っていた哲学的な要素や、社会問題を反映した深みが後退しているなど。旧シリーズの歴史が長いため、キャラクターや出来事に思い入れのある視聴者には受け入れにくい部分があり、新旧ファンの間で評価の分かれる原因となっている。
こぼれ話
J・J・エイブラムス監督自身は、もともと『スター・トレック』の熱心なファンではなく、彼のアプローチは「新しい観客にとっても楽しめる映画を作る」ことに重点を置いていた。この視点が結果的に、従来のファンと新規観客の双方にアピールする作品を生む(あるいは賛否が大きく分かれる)要因となった。
映画の脚本を手掛けたロベルト・オーチーとアレックス・カーツマンは、タイムトラベルによる歴史改変を採用した理由について、「これまでの物語を壊さず、新たな方向性を作り出すための方法だった」と語っている。この大胆な設定は、シリーズを新たな世代に届ける上で鍵となった。
キャスティングでは、クリス・パインがジェームズ・T・カーク役に抜擢されるまでには、マット・デイモンやクリス・ヘムズワース(後にカークの父役として出演)を含む多数の俳優が候補に挙がっていた。また、ザカリー・クイントがスポック役に選ばれた理由には、彼の冷静な表情とレナード・ニモイに似た顔立ちが影響しているという。なお、ニモイ本人が新旧のスポックとして出演し、「スター・トレック」シリーズの新旧をつなぐ重要な役割を果たした。
映画に登場するU.S.S.エンタープライズ号のデザインは、オリジナルシリーズのアイコンを尊重しつつも、現代の感性で再解釈されている。美術監督スコット・チェンブリスと視覚効果チームは、宇宙船の内部を未来的かつ実用的に感じられるよう仕上げるために、実際のハイテク施設や研究所を参考にしたという。
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