スターシップ・トゥルーパーズ(1997)の解説・評価・レビュー

スターシップ・トゥルーパーズ SF(近未来)
SF(近未来)ブラックコメディミリタリーアクション

B級映画風SFエンターテイメント! ---

1997年公開のSFアクション映画『スターシップ・トゥルーパーズ』(原題:Starship Troopers)は、ポール・バーホーベン監督が手がけた、ロバート・A・ハインラインの同名小説を原作とする作品である。物語は、未来の地球を舞台に人類と昆虫型エイリアン「バグズ」との壮絶な戦争を描く。戦場で成長していく若者たちの姿を通じて、戦争プロパガンダや軍国主義を皮肉る要素が随所に盛り込まれている。

当時、最新のCG技術を駆使したスペクタクルな戦闘シーンが話題を集めた一方で、暴力描写の過激さや風刺の効いた作風が視聴者の賛否を呼んだ。興行成績は全世界で1億2,100万ドル(当時のレートで約150億円)を記録。近年では、社会風刺SFとしての再評価が進んでおり、続編やアニメ作品も制作されている。

『スターシップ・トゥルーパーズ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


近未来の地球では、市民権を得るためには軍務に就くことが推奨されていた。名門高校に通うジョニー・リコ(キャスパー・ヴァン・ディーン)は、恋人のカルメン(デニス・リチャーズ)と共に軍への入隊を決意する。彼は歩兵部隊「モバイル・インファントリー」に配属され、過酷な訓練を受けながら成長していく。

一方、人類は地球外生命体「バグズ」との戦争に突入していた。リコは、仲間とともに過酷な戦場へと送り込まれる。一方、カルメンは宇宙艦隊のパイロットとして、リコの親友カール(ニール・パトリック・ハリス)は軍の情報部として、それぞれ異なる戦場で戦いに身を投じる。

やがてバグズの本拠地である惑星「クレンダス」に総攻撃が仕掛けられるが、人類側は圧倒的な戦力差の前に壊滅的な打撃を受ける。過酷な戦いの中で、リコは兵士としての覚悟を決め、仲間とともに反撃の機会を狙う。戦争の実態と人類社会のあり方が次第に明らかになる中、彼らの戦いは続く。

『スターシップ・トゥルーパーズ』の監督・主要キャスト

  • ポール・バーホーベン(59)監督
  • キャスパー・ヴァン・ディーン(29)ジョニー・リコ
  • ディナ・メイヤー(28)ディジー・フロレス
  • デニース・リチャーズ(26)カルメン・イバネス
  • ジェイク・ビジー(26)エース・リビー
  • ニール・パトリック・ハリス(24)カール・ジェンキンス
  • パトリック・マルドゥーン(28)ザンダー
  • マイケル・アイアンサイド(49)ジーン・ラズチャック

(年齢は映画公開当時のもの)

『スターシップ・トゥルーパーズ』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 4.0 ★★★★☆
・大切な人と観たい 2.0 ★★☆☆☆
・ひとりでじっくり 2.0 ★★☆☆☆
・強烈なブラックユーモア 5.0 ★★★★★
・昆虫恐怖(大量) 4.0 ★★★★☆

ポジティブ評価

『スターシップ・トゥルーパーズ』において、まず目を引くのが迫力満点の戦闘シーンだ。巨大な昆虫型エイリアン「バグズ」との戦闘は、CGと実物大のモデルを巧みに組み合わせ、クリーチャーデザインのディテールにも注目したいポイントだ。

また、本作の真骨頂は、単なる戦争映画にとどまらない「風刺」の要素にある。軍国主義やプロパガンダ、社会体制への皮肉を大胆に取り入れた作風は、視聴者に「この世界、本当に正しいのか?」と問いかける。ニュース映像風のプロパガンダ映像や、「戦争ヒーロー」に仕立てられる若者たちの姿は、監督ならではの皮肉が効いており、単なる娯楽作以上の深みを持たせている。ただの宇宙戦争映画と思わず、背後にあるメッセージを探りながら鑑賞してみると、より楽しめるだろう。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

基本的に「人類 vs. 巨大昆虫」という直線的な構図のため、深いドラマ性を求めると物足りなさを感じるかもしれない。登場人物たちの成長や葛藤は描かれているものの、あくまで「軍隊に入った若者たちの戦争体験」にフォーカスしており、細かな心理描写を求める作品ではない。

また演出面では、あえて戦争プロパガンダ映画のような作りになっているため、初見では「これ、真面目に作っているのか?」と戸惑うかもしれない。ニュース映像風のシーンや、軍国主義を称賛するかのような演出は、皮肉であることを理解していないと違和感を覚える。監督のブラックユーモアを楽しめるかどうかで、この映画の印象は大きく変わるだろう。

こぼれ話

監督のポール・バーホーベンは、原作小説を映画化するにあたり「単なる戦争賛美映画にはしたくない」と考え、強烈な社会風刺を加えることを決意。撮影前に原作を読むよう勧められた彼は、途中で投げ出し「これは退屈すぎる!」と言い放ったという。その結果、映画版は原作とは異なるアプローチを取り、ブラックユーモアに満ちた独特な作品となった。

キャスト陣には撮影前に「軍隊風の訓練」が課されたが、実際の軍事指導者が見たら「これは軍事訓練というよりアウトドアキャンプでは?」と思うような内容だったらしい。それでも、キャスパー・ヴァン・ディーンをはじめとする俳優陣は、撮影中に本当に友情を深めたようで、「戦友のような気分で演じることができた」と語っている。

本作の「バグズ」たちはすべてがCGではなく、実際の撮影現場には「バグズのパーツを模した小道具」も用意されていた。俳優たちは、画面上では壮絶な戦いを繰り広げているが、実際には空中に向かって銃を撃ったり、スタッフが持っている「棒に取り付けられたバグの頭」に向かって叫んだりすることもあったという。シリアスなシーンを演じながらも、撮影の合間には「バグ役のスタッフ」に向かって悪ふざけをすることもあったとか。

さらに、劇中に登場する「軍のプロパガンダ映像」は、第二次世界大戦時のニュース映画を模して制作されており、あえて演技を大げさにしたり、映像を粗く加工したりする工夫が施されている。そのため、初めて本作を観た人の中には「この映画、本気なのか? それとも風刺なのか?」と混乱することもあるらしい。

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