ラップからスクリーンへ、時代を越えるエンターテイナー
本名ウィラード・キャロル・スミス・ジュニア。1968年9月25日、アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアに生まれる。父は冷蔵設備会社を経営し、母は教育委員会に勤めていた。4人きょうだいの次男として育ち、幼い頃から人を楽しませることが好きだったという。学業成績は優秀で、マサチューセッツ工科大学(MIT)から奨学金の打診もあったが、大学進学はせずエンターテインメントの道に進む。
1980年代後半、DJジャジー・ジェフとのヒップホップ・デュオ「DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince」として音楽活動を開始。1989年にはグラミー賞を受賞し、ラッパーとして若くして成功を収めた。その後、テレビドラマ『ベルエアのフレッシュ・プリンス』(1990年〜)で主演に抜擢され、コメディ俳優としての人気を確立。この番組が全米でヒットしたことで、俳優としてのキャリアが本格的にスタートすることとなった。
ウィル・スミスの経歴
俳優としてのキャリア
1990年、22歳のウィル・スミスはNBCのテレビドラマ『ベルエアのフレッシュ・プリンス』で主演を務め、一躍人気者となる。音楽活動と並行しながら俳優としての才能を発揮し、同作は6シーズンにわたって放送された。1993年には『メイド・イン・アメリカ』で本格的に映画進出し、1995年、27歳で主演した『バッドボーイズ』がヒット。アクションスターとしての地位を確立した。
1996年には『インデペンデンス・デイ』に出演し、地球外生命体と戦うパイロット役で世界的な大ヒットを記録。翌1997年の『メン・イン・ブラック』では、トミー・リー・ジョーンズとの名コンビでユーモアとアクションを融合させ、続編も製作される人気シリーズとなった。2001年、33歳のときに主演した伝記映画『アリ』では、ボクシング界の伝説モハメド・アリを演じ、アカデミー賞主演男優賞に初ノミネートされる。
2006年には『幸せのちから』で実在のビジネスマン、クリス・ガードナーを演じ、再びアカデミー賞主演男優賞にノミネート。息子ジェイデン・スミスとの共演でも話題となった。2007年の『アイ・アム・レジェンド』では孤独なサバイバルを描き、俳優としての幅をさらに広げた。2010年代以降も『フォーカス』『スーサイド・スクワッド』『ジェミニマン』など話題作への出演が続き、2021年には『ドリームプラン』でテニス選手ヴィーナス&セリーナ・ウィリアムズの父親リチャード・ウィリアムズを演じ、キャリア初のアカデミー賞主演男優賞を受賞した(53歳)。
一方で、2022年のアカデミー賞授賞式における騒動では、コメディアンのクリス・ロックを壇上で平手打ちしたことが国際的に大きな議論を呼び、後に自身で謝罪した。この件をきっかけに一時的に活動を控えたものの、現在も映画界への復帰を目指しつつ、作品選びや発言に慎重さを増している。俳優としての地位を築きながら、栄光と試練の両方を経験してきた稀有な存在である。
製作者としてのキャリア
ウィル・スミスは俳優業に加え、1997年に自身の制作会社「オーバーブルック・エンターテインメント」を設立し、映画やテレビ番組のプロデュースにも力を注いでいる。2001年の『アリ』以降、自ら出演する作品の多くに製作者として関わっており、『幸せのちから』や『アイ・アム・レジェンド』『ハンコック』『ドリームプラン』などで製作総指揮を担当。息子ジェイデン・スミスが主演した『アフター・アース』(2013年)もプロデュースしている。また、配信プラットフォーム向けのコンテンツやドキュメンタリーにも関心を示し、NetflixやYouTube Originalsと提携した企画も手がけている。演技と並行して制作の現場にも深く関与するスタイルを築き上げている。
受賞歴・代表作
2021年の『ドリームプラン』でアカデミー賞主演男優賞を受賞。これ以前にも、『アリ』(2001年)と『幸せのちから』(2006年)で同賞にノミネートされた実績を持つ。
代表作には、世界的ヒットを記録したSFアクション『インデペンデンス・デイ』、エージェント役で人気を博した『メン・イン・ブラック』シリーズ、実在の人物を熱演した『アリ』と『幸せのちから』、そして家族愛と努力を描いた『ドリームプラン』などがある。ジャンルを問わず幅広い作品に出演し続ける一方で、常にスター性と演技力の両面を兼ね備えた俳優として、映画界に強い影響を与えてきた。