英国の気品と芯の強さを併せ持つ実力派女優
本名エミリー・オリヴィア・レア・ブラント。1983年2月23日、イギリス・ロンドン郊外のローハンプトンに生まれる。父は弁護士、母は元舞台女優で教師という家庭に育ち、4人きょうだいの次女である。幼少期には吃音に悩まされたが、演劇を通じて克服。これが俳優という職業を志すきっかけとなった。
12歳から演技を学び始め、名門ハートウッド・ハウス演劇学校を経て、17歳で舞台デビュー。2001年には舞台『ザ・ロイヤル・ファミリー』でジュディ・デンチと共演し、ロンドンの舞台界で注目を浴びる。スクリーンデビューは2003年、テレビ映画『ウォリアー・クイーン』での出演であり、以降はイギリス国内のドラマや映画に出演を重ねた。
エミリー・ブラントの経歴
俳優としてのキャリア
2003年、20歳のエミリー・ブラントはテレビ映画『ウォリアー・クイーン』でスクリーンデビューを果たす。翌2004年には英国映画『マイ・サマー・オブ・ラブ』に主演し、同性愛をテーマにした繊細な演技が高く評価され、英国インディペンデント映画賞で最優秀新人賞を受賞。2006年、23歳で出演した『プラダを着た悪魔』では、冷酷で皮肉屋なアシスタント役を演じ、メリル・ストリープとアン・ハサウェイに並ぶ存在感を示した。この作品でゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされ、国際的な注目を集めることとなった。
2007年には『ジェイン・オースティンの読書会』『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』などに出演し、作品ごとに異なるジャンルと役柄に挑戦。2009年には『ヴィクトリア女王 世紀の愛』で主役ヴィクトリア女王を演じ、歴史劇における演技力も証明した。2010年にはアクションとロマンスを融合させた『ウルフマン』に出演し、ジャンル映画でも存在感を発揮していく。
私生活では、2008年に俳優ジョン・クラシンスキーとの交際を開始。2010年7月、27歳で結婚し、2014年に第一子となる長女を出産。2016年には第二子が誕生している。夫婦は私生活を公にしすぎず、共同出演を含むプロフェッショナルな関係でも注目されている。
2014年、31歳のときに出演したSFアクション『オール・ユー・ニード・イズ・キル』では、戦闘スーツをまとった兵士役を演じ、アクション女優としての新境地を開拓。2016年には『ガール・オン・ザ・トレイン』で主役のアルコール依存症の女性を演じ、心理的に複雑な役柄を体現。2020年以降は、夫クラシンスキーが監督を務めた『クワイエット・プレイス』シリーズで主演を務め、家族愛とサバイバルの緊張感をリアルに演じきった。
2023年にはクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』に出演し、主人公の妻キティ・オッペンハイマーを演じて再び評価を高めた。40代に入った現在も、演技の幅をさらに広げ、重厚なドラマからアクション、コメディまで多彩な役柄に挑み続けている。
製作者としてのキャリア
エミリー・ブラントは俳優業に加えて、プロデューサーとしても活動の幅を広げている。とくに夫ジョン・クラシンスキーと共同で取り組んだ『クワイエット・プレイス』シリーズでは、主演だけでなく企画開発段階から関与し、夫婦によるクリエイティブな協働体制が話題を呼んだ。シリーズ第2作以降は制作面での意見も反映されており、単なる出演者を超えて作品づくりに携わっている。今後も、演者としての表現力にとどまらず、物語の設計に関わる立場としての活動が注目されている。
受賞歴・代表作
2007年にテレビ映画『ギデオンの娘』でゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞。2019年には『メリー・ポピンズ リターンズ』でゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされるなど、国際的な演技賞の常連となっている。
代表作には、キャリアの転機となった『プラダを着た悪魔』、歴史映画として評価された『ヴィクトリア女王 世紀の愛』、アクションで新境地を開いた『オール・ユー・ニード・イズ・キル』、心理スリラー『ガール・オン・ザ・トレイン』、そして世界的ヒット作となった『クワイエット・プレイス』シリーズがある。ジャンルを越えた確かな演技力で、イギリスとハリウッド双方で安定した評価を築いている。