本名はサミュエル・リロイ・ジャクソン。1948年12月21日、アメリカ・ワシントンD.C.に生まれる。幼少期に父親が家を出たため、テネシー州チャタヌーガで母親と祖父母の手で育てられた。母は工場で働きながら家計を支え、厳格な環境の中でジャクソンは成長した。
地元の高校を卒業後、黒人男子大学として知られるモアハウス大学に進学。当初は海洋生物学を専攻していたが、選択科目として受講した演劇クラスをきっかけに芝居の魅力に引き込まれ、専攻を演劇に変更した。在学中には公民権運動にも参加し、黒人解放運動への意識を深めると同時に、表現者としての意志も形成されていった。卒業後はアトランタを拠点に舞台俳優としての訓練を積み、ニューヨークに拠点を移す頃には、次第に映画界からも注目される存在となっていた。
サミュエル・L・ジャクソンの経歴
俳優としてのキャリア
1980年にラトーニャ・リチャードソンと結婚し、1982年に一人娘ゾーイが誕生している。キャリア初期はアルコールと薬物依存に苦しみながらも、舞台作品を中心に演技を積み重ねた。
1988年、40歳のときに『星の王子 ニューヨークへ行く』で小さな役ながら商業映画への足がかりを得ると、90年代初頭には『グッドフェローズ』『パトリオット・ゲーム』『ジュラシック・パーク』といった話題作に脇役として次々に名を連ねた。鋭い語り口と存在感の強さで、ハリウッドでも着実に認知度を高めていった。
1991年、43歳で出演したスパイク・リー監督の『ジャングル・フィーバー』では、薬物依存の弟役に実体験を重ねた演技を披露。カンヌ国際映画祭で特別助演賞を受賞し、批評家の間で演技派俳優としての評価を確立した。続く1994年には、クエンティン・タランティーノ監督による『パルプ・フィクション』で冷徹な殺し屋ジュールスを演じ、一躍世界的な注目を集めた。この役によりアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、名実ともに一流俳優の仲間入りを果たす。
以降、彼はキャリアの幅を広げながら『ダイ・ハード3』(1995年)でアクション大作に挑戦し、メジャースタジオとの信頼関係を構築。1999年からは『スター・ウォーズ』新三部作においてジェダイ評議会の一員・メイス・ウィンドゥ役を演じ、サイエンス・フィクション分野でも大きな存在感を示した。
2008年、60歳のときに『アイアンマン』のポストクレジットシーンにニック・フューリー役で登場したことで、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の世界観を支える中心人物の一人となった。この役は以降、『アベンジャーズ』『キャプテン・マーベル』『マーベルズ』などの主要作品に継続的に登場し、シリーズの語り手としての役割を担っていく。
2025年には77歳で、ヴァンサン・カッセルと共演したアクション・スリラー『ザ・チェイサー/追撃者』にも出演し、高齢になっても演技の幅と存在感に衰えを見せない。50年近くにわたりスクリーンに立ち続けるそのキャリアは、ジャンルや役柄を超えて映画界に刻まれている。
受賞歴・代表作
サミュエル・L・ジャクソンはアカデミー賞の受賞歴はないものの、1994年の『パルプ・フィクション』で助演男優賞にノミネートされ、2021年にはアカデミー賞名誉賞を受賞した。出演作の累計興行収入は歴代トップクラスを誇り、ハリウッドで最も成功した俳優の一人とされている。
代表作には、カルト的な人気を誇る『パルプ・フィクション』、大ヒットアクション『ダイ・ハード3』、伝説的キャラクターを演じた『スター・ウォーズ』プリクエル三部作、マーベル作品の重要人物となった『アベンジャーズ』シリーズ、そしてタランティーノ監督と再び組んだ『ヘイトフル・エイト』などがある。