1990年は、ハリウッド映画が80年代の過剰さから脱却し、次の時代へと向かい始めた端境期。
ブロックバスター、文芸大作、独立系作品のいずれもが豊作で、ジャンルの幅と多様性が際立った年として記憶されている。
興行面で最も大きな話題となったのは、『ホーム・アローン』の世界的ヒット。ケヴィン少年の機転とドタバタ劇は、子ども向け映画という枠を超えて大人の視聴者も巻き込み、コメディとアクションの融合が家族映画の新機軸を示した。『ダイ・ハード2』『トータル・リコール』といったアクション系の大作も安定した人気を誇り、ジャンル映画の力強さを印象づけた。
アカデミー賞を席巻したのは『ダンス・ウィズ・ウルブズ』。ケヴィン・コスナーが主演・監督を兼任し、先住民の視点に寄り添う語り口が高く評価された。ギャング映画の系譜では『グッドフェローズ』がマーティン・スコセッシの代表作として評価され、ロバート・デ・ニーロやレイ・リオッタの存在感が光った。
スター俳優たちの存在感もこの年を特徴づける要素。ブルース・ウィリスは『ダイ・ハード2』で再び不死身の刑事ジョン・マクレーンを演じ、アクションスターとしての地位を不動のものとした。アーノルド・シュワルツェネッガーは『トータル・リコール』で近未来SFに挑み、肉体派スターの枠を超えた多様性を示した。トム・クルーズは『デイズ・オブ・サンダー』で新境地に挑戦し、キャリア中盤におけるイメージ刷新を狙った時期でもある。女性スターではジュリア・ロバーツが『プリティ・ウーマン』で大ブレイクを果たし、一躍90年代を代表する女優となった。