ボディガード(1992)の解説・評価・レビュー

The Bodyguard アーティスト出演
アーティスト出演サスペンススリラー恋愛ドラマ

超名曲を生んだ王道ラブストーリー ---

1992年公開の『ボディガード』(原題:The Bodyguard)は、ケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンが主演するロマンティック・スリラー映画。監督はミック・ジャクソン、脚本はローレンス・カスダンが手がけた。物語は、元大統領警護官のフランク・ファーマーが、脅迫を受ける人気歌手レイチェル・マロンの警護を引き受けたことから始まり、やがて二人の間に特別な感情が芽生えていくというもの。

本作は、ホイットニー・ヒューストンの映画初出演作としても注目され、彼女が歌う主題歌「I Will Always Love You」は世界的な大ヒットを記録。サウンドトラックは4,500万枚以上を売り上げ、映画音楽史上最高クラスの成功を収めた。映画の興行収入も世界で4億1,100万ドル(当時のレートで約540億円)を超え、商業的に大きな成功を収めた。ロマンスとスリラーが融合したエンターテインメント作品として広く親しまれ、現在も根強い人気を誇る。

『ボディガード』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


元シークレットサービスのフランク・ファーマー(ケビン・コスナー)は、優秀なボディガードとして数々の要人を警護してきた。しかし、彼のもとに舞い込んだ新たな依頼は、世界的な人気歌手であり女優のレイチェル・マロン(ホイットニー・ヒューストン)の警護だった。彼女は謎のストーカーから脅迫を受けており、身の危険を感じたレイチェルのマネージャーがフランクに助けを求めたのだった。

厳格なプロ意識を持つフランクは、警護のルールを徹底しようとするが、自由奔放なレイチェルは彼のやり方に反発。互いに衝突しながらも、次第に信頼関係を築いていく。そして、レイチェルの身に危険が迫る中、二人の間には特別な感情が芽生え始める。しかし、ストーカーの脅威はますます強まり、フランクは命を懸けて彼女を守ることを決意する。果たして、レイチェルの命を狙う犯人の正体は誰なのか。そして、フランクとレイチェルの関係はどのような結末を迎えるのか――。

『ボディガード』の監督・主要キャスト

  • ミック・ジャクソン(49)監督
  • ケビン・コスナー(37)フランク・ファーマー
  • ホイットニー・ヒューストン(29)レイチェル・マロン
  • ゲイリー・ケンプ(33)サイ・スペクター
  • ビル・コッブス(58)ビル・デヴァニー
  • トーマス・アラナ(37)グレッグ・ポートマン
  • ミシェル・ラマー・リチャーズ(年齢不詳)ニッキー・マロン
  • マイク・スター(42)トニー・シペリ

(年齢は映画公開当時のもの)

『ボディガード』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 5.0 ★★★★★
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・I Will Always Love You 5.0 ★★★★★
・王道ラブロマンス 4.0 ★★★★☆

ポジティブ評価

『ボディガード』は、ロマンス&サスペンスのエンターテインメント作品として、今なお根強い人気を誇る。ケビン・コスナー演じるフランク・ファーマーは、寡黙でプロフェッショナルなボディガードとしての威厳を保ちつつ、時折見せる優しさが父親のよう。対するホイットニー・ヒューストンは、実際のトップスターさながらのオーラを放ち、劇中での華やかなステージシーンはもちろん、気の強いキャラクターもハマっている。二人の対照的な性格が、物語に緊張感とドラマを生み出す。

本作の最大の功績は、そのサウンドトラックだろう。ホイットニー・ヒューストンが歌う「I Will Always Love You」は、映画を超えて音楽史に残る名曲となった。この曲が流れるシーンは、感動を倍増させる演出としても機能し、「歌で物語を締めくくる」という手法が見事にハマっている。サウンドトラックは驚異的なセールスを記録し、映画史上最も売れたアルバムのひとつとなった。

ストーリーは王道ながら、緊張感のある展開が続くため、単なる恋愛映画にとどまらない点も評価が高い。ボディガードとしての任務と個人的な感情の間で揺れるフランクの葛藤が、静かに力強く描かれており、単なる「イケメン×スターの恋愛映画」と侮ると意外としっかりした物語に驚かされるかもしれない。

※ホイットニー・ヒューストン「I Will Always Love You」

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

楽曲の影響が強く映画自体の評価にも大きく影響を与えるため、作品の本質的な評価が難しい側面がある。楽曲も映画の重要な要素の一部であることは確かなのだが。

内容に関する批判的な感想を探すと、世界中のレビューサイトで概ね一致するのは「依頼人とボディガードが安易にくっつく」設定のところ。ホイットニー・ヒューストン演じるレイチェル・マロンが若干?無防備である点も気がかり。ただこれに関しては、彼女の自由を奪われることへの抵抗が現代のスターにも通じる普遍的なテーマといえる。

 

こぼれ話

『ボディガード』の脚本は、実は1970年代に書かれたものだった。当初はスティーブ・マックイーンとダイアナ・ロスの共演が想定されていたが、実現せずに長年お蔵入り。その後、ケビン・コスナーが企画を復活させ、自らプロデューサーとしてホイットニー・ヒューストンを主演に迎えることを決めた。コスナーは「彼女こそがこの役にふさわしい」と確信していたそうで、その後の歴史的な成功を考えればまさに慧眼だったと言える。

ホイットニー・ヒューストンにとって本作は映画初出演であり、撮影当初は演技に対する不安を抱えていたという。しかし、ケビン・コスナーは彼女を支え、撮影現場では演技のアドバイスも積極的に行っていた。ちなみに、彼女が歌う名曲「I Will Always Love You」は、もともとカントリー歌手ドリー・パートンの楽曲だったが、映画用にパワフルなバラードへとアレンジされ、結果的に音楽史に残る大ヒットとなった。アカペラで始まる構成については、なんと(!)ケビン・コスナーが強く推したのだという。

また、映画の象徴的なシーンの一つである「フランクがレイチェルを抱きかかえるポスター写真」は、実はホイットニー・ヒューストンではなく、代役が務めている。理由はシンプルで、撮影当時のホイットニーは長時間の撮影に疲れ果てており、すでに帰宅してしまっていたからだという。代わりにカメラマンが手配したスタントダブルが撮影に参加し、そのまま映画を代表するビジュアルとなった。本人不在で生まれた名シーンとは、何とも興味深いエピソードだ。

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