地図を広げたその瞬間、冒険が始まる──80年代キッズムービーの金字塔
1985年公開の『グーニーズ』は、リチャード・ドナーが監督し、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めたアドベンチャー映画である。少年少女たちの冒険と友情を描いた本作は、80年代のハリウッド映画を代表する作品のひとつとなった。主演はショーン・アスティン、ジョシュ・ブローリン、ジェフ・コーエンら。当時まだ無名だった若手俳優たちが多数出演し、後に人気俳優となるメンバーも多い。
物語は、オレゴン州アストリアの港町を舞台に、立ち退きを迫られた少年マイキーとその仲間たち「グーニーズ」が、伝説の海賊「片目のウィリー」の財宝を探し求める冒険に繰り出すというもの。隠された洞窟、仕掛けだらけのトラップ、脱獄したフラッテリー一家との対決など、スリル満点の展開が次々と繰り広げられる。
本作は、80年代特有のワクワク感とノスタルジックな雰囲気を持ちつつ、子供向けながらもスピード感あふれるストーリーと個性豊かなキャラクターで幅広い世代に愛された。興行収入は全世界で約1億2500万ドル(当時のレートで約312億円)を記録し、商業的にも成功。特にアメリカでは、後の世代にも語り継がれるカルト的人気を誇る。公開から40年近く経った現在でも、冒険映画の傑作として親しまれ、ファンの間では続編の噂が絶えない作品である。
『グーニーズ』あらすじ紹介(ネタバレなし)
オレゴン州アストリアに住む少年マイキー(ショーン・アスティン)とその仲間たち「グーニーズ」は、経済的な理由で立ち退きを迫られ、故郷を失う危機に直面していた。そんなある日、マイキーは屋根裏部屋で、17世紀の伝説の海賊「片目のウィリー」の財宝の地図を発見する。ウィリーの隠した財宝が本当に存在するなら、町を救う手がかりになるかもしれない。
こうして、グーニーズのメンバーは宝探しの冒険へと乗り出す。
地図を頼りに進んでいくと、彼らはフラッテリー一家という犯罪者グループの隠れ家に迷い込んでしまう。脱獄したばかりのフラッテリー一家は冷酷で、宝を狙う彼らはグーニーズの後を追い始める。やがて子供たちは地下の洞窟へと入り込み、そこには数々の危険な仕掛けや罠が待ち受けていた。
一方、マイキーの兄ブランド(ジョシュ・ブローリン)と彼の仲間たちも、グーニーズを追いかけて洞窟へと向かう。こうして、少年たちとフラッテリー一家による命がけの財宝争奪戦が繰り広げられる。
果たしてグーニーズは無事に財宝を見つけ、故郷を救うことができるのか。そして、伝説の「片目のウィリー」の真実とは──。少年たちの勇気と友情が試される、スリリングな大冒険が始まる。
『グーニーズ』の監督・主要キャスト
- リチャード・ドナー(55)監督
- ショーン・アスティン(14)マイキー・ウォルシュ
- ジョシュ・ブローリン(17)ブランド・ウォルシュ
- ジェフ・コーエン(11)ローレンス・“チャンク”・コーエン
- コリー・フェルドマン(13)クラーク・“マウス”・デヴリュー
- キー・ホイ・クァン(13)リッキー・“データ”・ワン
- ケリー・グリーン(18)アンディ・カーマイケル
- マーサ・プリンプトン(14)ステファニー・“ステフ”・スタインブレンナー
(年齢は映画公開当時のもの)
『グーニーズ』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・THE 冒険映画! | 5.0 ★★★★★ |
・シンディ・ローパーの主題歌 | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『グーニーズ』は、80年代のアドベンチャー映画を代表する作品として、今なお多くのファンに愛されている。スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めたこともあり、少年少女の冒険と友情を描くストーリーには、彼らしいワクワクするような要素が詰め込まれている。
監督のリチャード・ドナーは、キャラクター同士の自然な掛け合いや、子供ならではのエネルギーを生かした自由な演出を重視し、全編を通じてテンポの良い展開が続く。特に、宝探しの手がかりを追いながら、次々と仕掛けられたトラップをくぐり抜けていく展開は、まさに子供の頃に夢見た「本物の冒険」を映像化したかのようだ。
キャラクターの魅力も本作の大きな強みである。主人公のマイキーを演じたショーン・アスティンは、好奇心旺盛で真っ直ぐな少年を自然に演じており、視聴者は彼と一緒に冒険に引き込まれていく。兄のブランドを演じたジョシュ・ブローリンは、本作が映画デビュー作でありながら、しっかりとした存在感を発揮。さらに、チャンク、マウス、データといった個性的な仲間たちが、それぞれの得意技やユーモアで物語に彩りを加えている。特にチャンクの「トラブルを招く体質」は、映画全体のコメディ要素を支える重要なポイントだ。
また、映画の舞台となる洞窟や財宝の隠し場所は、セットデザインにもこだわりが見られる。巨大な海賊船や巧妙に仕掛けられた罠など、子供たちの想像力をそのまま現実にしたような美術セットは、映画の世界観をより魅力的なものにしている。洞窟内の撮影は実際の巨大セットを使用して行われ、子役たちには海賊船の存在を伏せておき、初めて見たときのリアクションをリアルに撮影したというエピソードもある。
音楽もまた、映画の楽しさを倍増させている。シンディ・ローパーによる主題歌「The Goonies ‘R’ Good Enough」は80年代らしいエネルギッシュな楽曲で、作品の雰囲気にぴったり合っている。軽快なメロディーは映画とともに記憶に残りやすく、現在でも本作を象徴する楽曲として親しまれている。
『グーニーズ』は、子供の冒険心とユーモア、スリルが詰め込まれた映画であり、まさに「子供時代に体験したかった冒険」をスクリーン上で叶えてくれる作品である。大人になって観ても楽しめるのは、子供の頃に感じたワクワク感をそのまま思い出させてくれるからだろう。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『グーニーズ』は子ども向け冒険映画の代表格であり、そのポジティブな評価に異を唱える声は少ない。とくに1980年代の公開当時、登場人物たちと同世代であった子どもたちやその親世代にとっては、特別な思い出とともに記憶されている作品である。宝の地図、秘密の通路、個性的な仲間たち──それらが組み合わさった世界観は、ノスタルジーを呼び起こす力に満ちている。
しかし一方で、そのノスタルジーを取り払って現代の大人が初めてこの作品を観たときの印象はどうだろうか。テンポの速さやユーモア、キャラクターの活発さは今なお通用するが、「意外と普通」「よくある子ども映画」といった声もネット上では散見される。80年代らしい勢いや演出が、逆に古さや粗さとして捉えられることもあり物足りなさを感じる視聴者も存在する。
また、現代的な価値観とのズレも議論の対象となっている。たとえば、アジア系キャラクターの誇張された英語アクセントや、肥満体型の少年が度々笑いの対象になる描写は、現在の感覚ではステレオタイプとして問題視される可能性がある。これらの表現は、当時は娯楽の一部として受け入れられていたが、今日では作品全体の印象に影響を与える要素として受け止められることもある。
とはいえ、こうした意見は本作の魅力を損なうものではない。時代ごとの視点で評価が変化するのは、映画が生きた文化である証左でもある。『グーニーズ』が今も語られ続けているという事実こそが、その影響力と特異なポジションを示している。どこか粗削りで、でも胸が躍る。そんな作品である。
こぼれ話
『グーニーズ』の撮影現場は、子役たちにとってまさに「リアルな冒険」だったようだ。特に、映画のクライマックスに登場する巨大な海賊船は、本物のセットとして作られ、子供たちには撮影までその存在が秘密にされていた。彼らが初めて目にした時のリアクションは、映画にそのまま使われている。ショーン・アスティン(マイキー役)は、「あの瞬間、僕たちは本当に海賊の財宝を見つけた気分だった」と後に語っている。ちなみに、このセットは撮影終了後に片付けられる予定だったが、あまりに精巧だったため、あるスタッフが「これを欲しい!」と申し出たという。しかし、巨大すぎて誰も持ち帰ることができず、結局解体された。もし今も残っていたら、間違いなく映画ファンの聖地になっていただろう。
また、撮影中に起きたハプニングも興味深い。ジェフ・コーエン(チャンク役)は、映画の中で「トラブルメーカー」として描かれるが、実際の撮影でも何かとエピソードが絶えなかった。ある日、高熱を出した彼は「撮影を休ませてほしい」とお願いしたが、プロデューサーに「そのまま来て! 痩せて見えるから!」と説得され、結局撮影に参加したという。当時のハリウッドらしいエピソードではあるが、現代なら即アウトな話かもしれない。
本作は、子役たちの自由な演技が特徴だが、それは監督リチャード・ドナーの方針でもあった。彼は、子供たちが台本通りに演じるのではなく、自然な会話の流れを大切にした。そのため、映画内のセリフの多くはアドリブであり、特にコリー・フェルドマン(マウス役)は即興でしゃべることが多かったという。
この自由な演技スタイルが、グーニーズの会話のリアルさと楽しさを生み出している。また、撮影終了後もキャストたちは交流を続けており、2020年にはキャストとスタッフがリモートで再会し、思い出を語る特別番組が配信された。ジョシュ・ブローリン(ブランド役)は、今ではすっかりハリウッドの大物俳優となったが、再会した際には「僕はまだグーニーズの一員だよ」と語り、ファンを喜ばせた。
もしかすると、大人になったグーニーズの続編がいつか実現する日が来るかもしれない。『グーニーズ』は、子供たちの夢と冒険心をそのままスクリーンに詰め込んだ作品であり、その裏側にも映画さながらのワクワクするエピソードが満載だった。
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