ジム・キャリーの礎を築いた傑作コメディ ---
1994年公開の『マスク』(原題:The Mask)は、チャールズ・ラッセルが監督によるアメリカのファンタジー・コメディ映画。ジム・キャリーが主演を務め、カートゥーンのようなポップな演技が特徴のコメディ作品として知られる。原作はダークホースコミックスの同名漫画だが、映画版では暴力的な要素を抑え、明るいトーンに仕上げられている。
物語は、気弱な銀行員スタンリー・イプキスが、謎の仮面を手に入れたことで陽気で超人的な存在「マスク」に変身し、騒動を巻き起こすという展開。ジム・キャリーの身体を張った演技と、当時最先端のCG技術によるユーモラスな特殊効果が話題を呼び、全世界で3億5,100万ドル(当時のレートで約350億円)以上の興行収入を記録し大ヒット。サンドラ・ブロックやアンナ・ニコル・スミスなどが候補に挙がる中、当時無名だったキャメロン・ディアスがヒロイン役に大抜擢され、本作が映画デビュー作となった。ジム・キャリーのコミカルな演技が高く評価され、90年代を代表するコメディ映画のひとつとなった。
『マスク』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
気弱で優しい銀行員のスタンリー・イプキスは、仕事でもプライベートでも冴えない毎日を送っていた。そんなある日、彼は川に浮かぶ奇妙な仮面を見つける。その仮面を夜に試しにかぶってみたところ、スタンリーは陽気でカートゥーンのような超人的存在「マスク」へと変身してしまう。変身後のスタンリーは、常識を無視したパワーと大胆な性格で街中を騒がせ、あらゆるトラブルを引き起こしていく。
やがて、スタンリーは「マスク」の力を利用して、自分をいじめる上司や悪徳ギャングに立ち向かうようになる。しかし、次第にその力の強大さと危険性に気づき始める。仮面を狙うギャングのボスとの対立が激化する中、スタンリーは自分の人生を変えるために、仮面の力をどう使うべきかに悩む。そして、魅力的な歌手ティナとの出会いが、スタンリーの運命をさらに大きく動かしていくことになる。
『マスク』の監督・主要キャスト
- チャールズ・ラッセル(42)監督
- ジム・キャリー(32)スタンリー・イプキス/マスク
- キャメロン・ディアス(21)ティナ・カーライル
- ピーター・リーガート(47)ミッチ・ケラウェイ警部
- ピーター・グリーン(28)ドリアン・タイレル
- エイミー・ヤスベック(31)ペギー・ブラント
- リチャード・ジェニ(37)チャーリー・シューマーカー
- オレステス・マタセーナ(43)ニコ
- ジム・ドゥーガン(38)ドイル刑事
(年齢は映画公開当時のもの)
『マスク』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・キャメロンディアスデビュー作 | 5.0 ★★★★★ |
・カートゥーン的コメディ | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『マスク』は、ジム・キャリーの驚異的な身体表現と視覚効果技術が光る、90年代コメディ映画の代表作である。なんといっても最大の魅力は、ジム・キャリーの圧倒的なエネルギー。彼のゴムのように変幻自在な表情とアニメのキャラクターのような動きは、CGエフェクトと相まって唯一無二のエンターテインメントを生み出している。特に、マスクに変身した後の誇張されたリアクションや、ダンスシーンでの軽快な動きは、ジム・キャリーでなければ成立しなかっただろう。
また、キャメロン・ディアスの華やかなスクリーンデビューも本作の魅力のひとつだ。ティナ・カーライル役の彼女は、妖艶さと可愛らしさを兼ね備え、スタンリー(マスク)との掛け合いに化学反応を生み出している。無名の新人ながら堂々とした存在感を放ち、一気にスターへの階段を駆け上がった。
本作のVFX(視覚効果)技術も当時話題に。マスクの顔の変形やコミカルな動きが実写と見事にフージョンし、明るい作風に仕上げられたことで家族で楽しめる作品となった。さらに、ジャズやスウィング音楽を取り入れた軽快なBGMが映画のテンポを盛り上げ好印象。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『マスク』のネガティブ要素を上げるならば、いかにもアメリカコメディのハイテンションがもしかしたら合わない人がいるかもしれない。特に、マスクに変身した後のギャグの連発は、一部日本の視聴者には騒がしく感じられる可能性がある。ジム・キャリーのオーバーアクトを楽しめるかどうかが分かれ目。
原作コミックのダークなトーンが映画版で一新。ポップで家族が楽しめる作品なのは好印象だが、原作アメコミファンには物足りなく感じられる可能性も。
こぼれ話
当時未だブレイク直前だったジム・キャリーの本作の出演料はたったの45万ドル(約4,500万円)だった。これでも、日本の俳優の相場からして恵まれていると思われるかもしれないが、後にハリウッドで最も稼ぐ俳優へと成長するジム・キャリーとしては破格の安さだと言える。
この映画と同年に公開された『エース・ベンチュラ』がヒットしたことで、彼は翌年の『バットマン・フォーエバー』では1作品で2000万(20億円)ドルものギャラを獲得する。結果的に、『マスク』は彼のキャリアを大きく飛躍させた作品となった。
ヒロインのティナ役は、当時まだ無名だったキャメロン・ディアスにとって記念すべき映画デビュー作。オーディションには多くの候補者が参加し、サンドラ・ブロックや、マリリンモンローの再来と言われたアンナ・ニコル・スミスなども候補に挙がっていた。しかし、キャメロン・ディアスのスクリーンテストを見た監督は彼女の魅力に惹かれ、即決でキャスティングを決めたという。ちなみに、撮影当初、彼女は演技経験がほぼなかったため、最初の数週間は演技指導を受けながら撮影が進められたとか。
マスクが変身するシーンは、アニメーションと実写を融合させた当時の先駆的な技術だった。ジム・キャリーの元々の表情の豊かさも相まって、特殊効果と彼の演技がシームレスに融合し、まるで本当にアニメキャラクターが実写の世界に飛び出したような仕上がりになった。なお、変身シーンに使用されたCGは、当時の技術としては比較的シンプルなものだったが、ジム・キャリーの動きがすでに「アニメっぽい」ため、最小限の加工で済んだという。
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