『トロン:レガシー(TRON: Legacy)』は、2010年に公開されたSFアクション映画で、1982年のカルト的名作『トロン』の続編にあたる。ジョセフ・コシンスキー監督が手掛け、ジェフ・ブリッジスが前作に引き続き出演。主演はギャレット・ヘドランドで、失踪した父を探しに仮想世界「グリッド」に迷い込んだ青年サムの冒険を描く。物語は、父ケヴィン(ジェフ・ブリッジス)が構築したデジタル世界で繰り広げられる壮大な親子の物語と、AIによる支配の危機を絡めたドラマが展開する。
革新的なVFX技術で仮想世界を表現したビジュアルは高く評価され、ダフト・パンクが手掛けたエレクトロニック・サウンドトラックは映画の世界観と完璧に融合している。製作費約1億7,000万ドル(当時のレートで130億円)に対し、全世界で約4億ドル(320億円)の興行収入を記録。ディズニーが提供する未来的な映像体験の可能性を広げた点でも意義深い作品である。
『トロン:レガシー』あらすじ紹介(ネタバレなし)
大手テクノロジー企業「エンコム」の創設者であるケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)は、コンピュータネットワーク内に「グリッド」と呼ばれる仮想世界を構築し、そこに自らの理想を投影していた。しかし、彼は突如として失踪し、現実世界には戻らなかった。20年後、彼の息子サム・フリン(ギャレット・ヘドランド)は父の行方を追う中で、偶然グリッドへのポータルを開いてしまう。
グリッド内に入ったサムは、父の作り出した人工知能「クルー」(ジェフ・ブリッジス/デジタル若返り)による独裁支配が続く世界を目の当たりにする。クルーはグリッドを完全に掌握し、人類のデジタル支配をもくろんでいた。一方、サムは父ケヴィンと再会を果たすが、グリッドからの脱出にはクルーとの対決が避けられないことを知る。
謎めいたプログラムの女性クオラ(オリヴィア・ワイルド)の助けを借り、サムは父と共に危険な戦いに身を投じる。果たしてサムは現実世界へ戻り、クルーの野望を阻止することができるのか――。仮想世界を舞台にした壮大な冒険と親子の絆が織り成す物語が展開する。
『トロン:レガシー』の監督・主要キャスト
- ジョセフ・コシンスキー(36)監督
- ギャレット・ヘドランド(26)サム・フリン
- ジェフ・ブリッジス(61)ケヴィン・フリン/クルー
- オリヴィア・ワイルド(26)クオラ
- ブルース・ボックスライトナー(60)アラン・ブラッドリー/トロン
- マイケル・シーン(41)キャスター/ゼウス
- ジェームズ・フレイン(42)ジャーヴィス
- ボー・ギャレット(27)ジェム
(年齢は映画公開当時のもの)
『トロン:レガシー』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 4.0 ★★★★☆ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 3.0 ★★★☆☆ |
・仮想世界のビジュアル | 5.0 ★★★★★ |
・音楽も魅力的 | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『トロン:レガシー』は、視覚的な革新と音楽の融合が際立った作品であり、映画体験に新たな地平を切り開いた点で高い評価を受けている。特に、デジタル世界「グリッド」を表現するVFXは圧巻で、仮想空間の美しさや緊張感を余すところなく映し出している。ネオンに輝くトロンスーツやライトサイクルのデザインは未来的でスタイリッシュな印象を与え、観客を独自のデジタル世界へ引き込む魅力がある。
ダフト・パンクが手掛けたサウンドトラックは、本作のもう一つの大きな見所(聴き所?)だ。エレクトロニックミュージックとオーケストラを融合させた楽曲は、作品のSF的な世界観を見事に補完している。特に、クライマックスのシーンやアクションシーンで流れる音楽は、映像とともに強い没入感を生み出している。
親子の絆とサムの成長物語も○。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
海外レビューを見渡すと、「退屈」とする評価と、それに対抗して「名作」とする勢力の争いが見られる。映画内で設定された「グリッド」という仮想世界のルールや仕組みが十分に説明されず、一部の観客にとっては混乱を招いている様子。
ビジュアルと音楽の圧倒的な力に対し、脚本がそれに追いついていないとの意見もある。
デジタル技術で若返らせたジェフ・ブリッジスの顔が人工的に見える点は、当時の技術的な限界か。これは後に「アンキャニー・バレー(不気味の谷)」と名付けられ欧米のネットで有名になってしまった。
こぼれ話
『トロン:レガシー』は、視覚と音楽が特徴的な映画として知られるが、その制作過程にも興味深いエピソードが多数存在する。まず、1982年の前作『トロン』は、当時としては画期的なCG技術を駆使していたが、続編である本作はそれを大幅に進化させ、デジタル時代の象徴ともいえる映像表現を追求している。特に、「グリッド」の構築には膨大なデザイン作業が費やされ、ライトサイクルのレースや仮想空間内のアクションシーンは評価が高い。
本作の音楽を担当したダフト・パンクは、映画音楽に初挑戦したにもかかわらず、まるで彼らのために作られたかのような世界観を生み出した。彼らは実際に映画にカメオ出演しており、クラブのシーンでDJとして登場しているのもファンには嬉しいポイントだ。また、彼らのサウンドトラックアルバムは映画を超えた評価を受け、全世界でヒットを記録した。
本作はディズニーの大規模なマーケティングキャンペーンの一環としても注目を集め、現実世界のテーマパークや商品展開と連動して広くプロモーションが行われた。特に、「トロン」の世界観を体験できるアトラクションや展示が、ファンやSF映画愛好家を惹きつけた。
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