ボルケーノ(1997)の解説・評価・レビュー

Volcano SF(地球破壊、パニック)
SF(地球破壊、パニック)

1990年代らしい、派手なパニック・エンターテイメント! ---

1997年公開のディザスターパニック映画『ボルケーノ』(原題:Volcano)は、ミック・ジャクソン監督が手がけ、トミー・リー・ジョーンズが主演を務めた作品である。ロサンゼルスの中心部に突如として火山が出現し、街全体が灼熱の溶岩流に飲み込まれる危機に直面する。都市インフラを管理する緊急事態対策本部長のマイク(トミー・リー・ジョーンズ)は、科学者たちと協力しながら、市民を救うために奔走する。
同時期に公開された『ダンテズ・ピーク』と並び、火山災害をテーマにした作品として話題を集めた本作は、都市型火山という斬新な設定と派手な特殊効果が見どころとなっている。興行収入は全世界で約1億2,200万ドル(当時のレートで約150億円)を記録し、当時のディザスター映画ブームの一翼を担った。リアルな科学考証というよりも、ハリウッド流のスペクタクルとスリルを重視した作風で、現在では“90年代らしいパニック映画”として人気を誇っている。

『ボルケーノ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)

ロサンゼルスの都市インフラを管理する緊急事態対策本部長のマイク・ローク(トミー・リー・ジョーンズ)は、地震の多発と異常な地熱上昇を受け、科学者のエイミー(アン・ヘッシュ)と共に調査を開始する。やがて、地下から突如としてマグマが噴出し、市街地のど真ん中で噴火が発生。ロサンゼルスは灼熱の溶岩流に飲み込まれ、街はパニックに陥る。

マイクは、壊滅的な被害を食い止めるために、市の職員や消防隊と協力しながら奔走するが、炎と煙に包まれた市街地での救助活動は困難を極める。さらに、溶岩の流れは制御不能な状態に陥り、都市全体が崩壊の危機に直面する。果たして、彼らはこの未曾有の大災害から街と市民を守ることができるのか——。

『ボルケーノ』の監督・主要キャスト

  • ミック・ジャクソン(52)監督
  • トミー・リー・ジョーンズ(51)マイク・ローク
  • アン・ヘッシュ(28)エイミー・バーンズ
  • ギャビー・ホフマン(15)ケリー・ローク
  • ドン・チードル(32)エミット・リース
  • ジャクリーン・キム(32)ジェイ・カルダー
  • キース・デヴィッド(41)エド・フォックス
  • ジョン・コーベット(36)ノーマン・カルダー

(年齢は映画公開当時のもの)

『ボルケーノ』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 5.0 ★★★★★
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 2.0 ★★☆☆☆
・トミー・リー・ジョーンズ! 5.0 ★★★★★
・溶岩パニック 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『ボルケーノ』は、1990年代のディザスター映画ブームを象徴する作品のひとつであり、「都会のど真ん中に突如として火山が出現する」という斬新な設定が特徴だ。災害映画といえば、通常は山奥や離島といった僻地が舞台になることが多いが、本作はロサンゼルスという巨大都市を舞台にしており、「もし都会で火山が噴火したら?」というユニークな仮説を映像化している。

火山災害を描いた作品としては、『ダンテズ・ピーク』(1997年)と比較されることが多いが、『ボルケーノ』は科学考証よりもアクションとスペクタクルを重視しており、よりエンタメ色が強い。溶岩流が街を飲み込んでいくシーンや、崩壊する建物を背景に展開する救助劇は、まさにハリウッドらしいド派手な演出の連続だ。
大きな魅力は、「人々が協力して災害に立ち向かう姿勢」をしっかりと描いている点にある。災害発生時に見られる混乱やパニックだけでなく、決断力を持った人々が冷静に対応しようとする姿が描かれており、無秩序な暴動がメインになるディザスター映画とは一線を画している。

主演のトミー・リー・ジョーンズは、堅実なリーダー像を体現し、冷静沈着な判断力と行動力で視聴者を引き込む。ドン・チードルやアン・ヘッシュといった実力派キャストが脇を固め、パニックだけでなく、ドラマとしての重厚感も◎。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

火山の噴火がロサンゼルスの地下から突如発生するという大胆な設定は、地質学的な説明はほぼなく勢いで進んでいく。キャラクターたちは高温の溶岩が流れる傍で活動し、「ちょっと熱いな」くらいのテンションで乗り切ってしまう。対処の仕方、登場人物の行動についてもツッコミどころはまあまあ多く、この映画の科学的な根拠や論理性について深く考えてはいけない。
しかしながら、そうした細かいことを気にせず、「街に溶岩が流れる」というシチュエーションを純粋に楽しめる”90年代らしい”パニック映画とえ、日曜日の午後にお勧めの一作である。

こぼれ話

『ボルケーノ』の撮影は実際のロサンゼルスではなく、ほぼすべてがセットで行われた。特に、溶岩が流れるウィルシャー大通りのシーンは、巨大なスタジオ内に精巧なストリートのミニチュアセットを組み上げ、そこに特殊効果で作られた溶岩を流すという大掛かりなものだった。結果的に、街全体が火山に飲み込まれるという非現実的な設定をCG無しで描くことに成功した。

また、当時の火山映画ブームの影響もあり、『ボルケーノ』は1997年に公開された『ダンテズ・ピーク』と比較されることが多い。『ダンテズ・ピーク』が田舎の山岳地帯でのリアルな火山噴火を描いたのに対し、『ボルケーノ』は「都市のど真ん中に火山が出現する」という、よりエンターテインメント寄りの設定を選択。いずれの科学検証の議論も、「ハリウッド流の誇張が激しい」という結論に落ち着く。

さらに、主演のトミー・リー・ジョーンズは本作の撮影中、あまりにも真剣に役に入り込んでいたため、セットの火山灰や炎の演出にも動じず、「まるで本当に災害現場で指揮を執っているかのようだった」とスタッフが語っている。ドン・チードルも撮影後、「もし本当に火山が噴火したら、トミーに指示を仰ぐかもしれない」と冗談を言ったほど。

映画の中で街を襲う「溶岩」には、特殊なジェル状の素材が使われており、安全のために低温で作られていた。撮影現場では「見た目は灼熱なのに、実際はひんやりしている」という奇妙な現象が起き、俳優たちは「熱が伝わってこないけど、熱そうに演じなきゃいけない」という難しい演技を強いられたという。

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