1999年『ワイルド・ワイルド・ウエスト』(原題:Wild Wild West)は、バリー・ソネンフェルド監督が手掛けたスチームパンク・アクションコメディ映画で、ウィル・スミスとケヴィン・クラインが主演を務める。1960年代に放送されたアメリカの同名テレビシリーズを原作とし、スチームパンク(SFと西部劇が融合した映画ジャンル)の独特な世界観が特徴である。
物語は、19世紀末のアメリカを舞台に、型破りな政府エージェントのジェームズ・ウエスト(ウィル・スミス)と、奇抜な発明を得意とする科学者アルテミス・ゴードン(ケヴィン・クライン)がコンビを組み、国家を脅かす狂気の発明家ラブレス博士(ケネス・ブラナー)の陰謀に立ち向かう。
本作は、ウィル・スミスの軽快なユーモアと派手なアクションが融合し、コメディタッチの娯楽映画として話題となった。また、特殊効果を駆使した独特なガジェットや壮大なセットデザインも注目を集めた。興行収入は全世界で約2億2,200万ドル(当時のレートで約270億円)を記録したが、批評家からの評価は賛否が分かれた。しかし、そのユニークな世界観やエンターテインメント性から、現在でもコメディアクション映画の一つとして語り継がれている。
『ワイルド・ワイルド・ウエスト』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
19世紀末のアメリカ。南北戦争が終結して間もない時期、アメリカ政府は国の平和を脅かす危険な発明家ラブレス博士(ケネス・ブラナー)の陰謀を阻止するため、二人のエージェントを派遣する。一人は、型破りで大胆不敵なガンマン、ジェームズ・ウエスト(ウィル・スミス)。もう一人は、奇抜な発明品と変装を得意とする科学者アルテミス・ゴードン(ケヴィン・クライン)。性格もアプローチも全く異なる二人だが、協力して任務に挑むことになる。
ラブレス博士は、南北戦争で失った両足の代わりに機械仕掛けの車椅子を使用し、巨大な蜘蛛型兵器「タランチュラ」を開発。アメリカを支配しようと企む。ジェームズとアルテミスは、ラブレス博士の部下である女スパイたちや数々の罠をくぐり抜けながら、博士の計画を阻止しようと奮闘する。道中では、二人の対照的な性格が衝突を生む一方で、やがて信頼関係を築き始める。
壮大なスチームパンクの世界観の中、ウエストとゴードンは力を合わせ、タランチュラに立ち向かうことができるのか。そして、ラブレス博士の野望を阻止し、国を救うことができるのか――。ユーモアとアクションが満載の冒険が、スリルと笑いと共に展開される。
『ワイルド・ワイルド・ウエスト』の監督・主要キャスト
- バリー・ソネンフェルド(46)監督
- ウィル・スミス(31)ジェームズ・ウエスト
- ケヴィン・クライン(52)アルテミス・ゴードン / ユリシーズ・S・グラント大統領
- ケネス・ブラナー(39)アリス・ラブレス博士
- サルマ・ハエック(33)リタ・エスコバー
- テッド・レヴィン(41)マグラス将軍
- フレデリック・ヴァン・デ・レー(28)ムニシャン
- ソフィア・エンディ(29)アマゾニア
(年齢は映画公開当時のもの)
『ワイルド・ワイルド・ウエスト』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 2.0 ★★☆☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・スチームパンクの魅力満載 | 4.0 ★★★★☆ |
・主人公二人の掛け合い | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『ワイルド・ワイルド・ウエスト』は、スチームパンク(SFと西部劇の融合)という独特なのビジュアルスタイルを取り入れた、娯楽性あふれるアクションコメディ。ウィル・スミスの明るさが映画全体に活気とユーモアをもたらし、彼のコミカルな掛け合いはケヴィン・クラインとの相性も抜群で、二人の凸凹コンビが大きな魅力だ。
奇抜なガジェットや巨大メカのデザインも見所のひとつ。特にラブレス博士が操る巨大蜘蛛型兵器「タランチュラ」はこの映画の象徴ともいえる存在である。ゴードンの発明品も、スチームパンクの要素を取り入れたユニークなものが多く、次々と登場するガジェットにワクワクさせられる。
ネガティブ評価
『ワイルド・ワイルド・ウエスト』は、1999年の第20回ゴールデンラズベリー賞(その年の最低の映画を選んで表彰するアメリカの映画賞)で作品賞を含む5部門の受賞をした作品である。
アクション、西部劇、スチームパンク、コメディと、あらゆる要素を詰め込んだ結果、それぞれがバラバラに浮いてしまってストーリーはおまけのような扱い、という扱いなのだとか。西部劇というより遊園地のような世界観が低評価に繋がった。
同作品が1960年代にカリスマ的な人気を得たテレビシリーズ『0088/ワイルド・ウエスト』の映画化としてリリースされたため、オリジナル愛の反動という見方も出来る。
現在は海外レビューサイトにおいても、純粋なエンターテイメントとして楽しむ傾向から評価が見直されている雰囲気が見受けられる。時の最新技術を駆使した特殊効果が、現在では逆に味がある。
こぼれ話
主演のウィル・スミスは、この作品への出演を選んだことで『マトリックス』のネオ役を辞退したことがあまりにも有名な話。スミスは後にインタビューで「『マトリックス』の脚本を完全に理解できなかった」と語っており、結果的にキアヌ・リーブスがネオを演じることになったが、この決断は映画界における大きなターニングポイントの一つとなった。ゴールデンラズベリー賞(前述)と相まって、1999年はウィル・スミスにとって難しい1年だった。
しかしながら、ウィル・スミスが歌う主題歌「Wild Wild West」は、当時大ヒットを記録し、音楽チャートでも上位にランクインした。この楽曲はスティーヴィー・ワンダーの「I Wish」をサンプリングしており、映画のプロモーションにおいて重要な役割を果たした。映画そのものへの評価は賛否が分かれたものの、この曲はウィル・スミスの音楽キャリアにおける成功の一つとなった。
映画で登場する巨大な蜘蛛型兵器「タランチュラ」は、製作総指揮を務めたジョン・ピーターズの提案によるものだ。ピーターズは以前から「映画に巨大なメカ蜘蛛を登場させたい」というアイデアを持っており、この作品でその夢を実現させた。奇抜なデザインが話題となった一方で、この蜘蛛は物語との関連が薄いと批判されることも多かった。
みんなのレビュー