ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022)の解説・評価・レビュー

ウーマン・トーキング 私たちの選択 実話(事件題材)
実話(事件題材)心理サスペンス社会派ドラマ

女性たちによる極上の会話劇 ---

『ウーマン・トーキング 私たちの選択(Women Talking)』は、2022年に公開された社会派ドラマで、カナダの作家ミリアム・トウズの小説を原作としている。監督はサラ・ポーリー(43)、主要キャストにはルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリーなどが名を連ねる。物語は、隔離された宗教共同体で性暴力を受け続けてきた女性たちが、自らの未来を決めるために議論を重ねる一夜を描く。抑圧的な環境下で選択肢を模索する女性たちの葛藤が緊張感あふれる台詞劇として展開される。

本作は第95回アカデミー賞で作品賞を含む2部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した。女性の声を力強く描いたこの作品は、観客に社会の不平等や個人の選択について深い問いを投げかけ、現代のジェンダー問題を浮き彫りにするものとなった。

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』のあらすじ紹介


孤立した宗教共同体で暮らす女性たちは、長年にわたり共同体の男性たちから性暴力を受け続けてきた。やがて暴力の真相が明らかになる中、女性たちは自らの未来について重大な決断を迫られる。共同体に残るか、抵抗するか、それとも去るか――。

暗闇の中、女性たちは納屋に集まり、互いの意見を交わしながら議論を重ねる。希望を見出す者、信仰に縋る者、怒りを抱え続ける者、それぞれの心情が交差し、時に衝突しながらも、彼女たちは人生を取り戻すための「選択」を見つけ出そうとする。話し合いが進むにつれ、彼女たちの中に眠る強さと団結の可能性が徐々に形作られていく。

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』の監督・主要キャスト

  • サラ・ポーリー(43)監督
  • ルーニー・マーラ(37)オナ
  • クレア・フォイ(38)サローム
  • ジェシー・バックリー(32)マリチェ
  • ジュディス・アイヴィー(70)アグネス
  • シーラ・マッカーシー(66)グレタ
  • ベン・ウィショー(41)オーガスト
  • フランシス・マクドーマンド(65)スカルスガード夫人

(役者の年齢は公開時点のもの)

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 1.0 ★☆☆☆☆
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 5.0 ★★★★★
・極上の会話劇 4.0 ★★★★☆
・考えさせられる 5.0 ★★★★★

極上の会話劇

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は、抑圧された環境の中で声を上げる女性たちの姿を描く。密室劇でありながら緊張感と感情のゆらぎが生まれ、女性たちの議論が静かでありながら力強い訴えとして響いてくる。アカデミー脚色賞を獲得した極上の会話劇。
特にルーニー・マーラやクレア・フォイらの繊細で深い演技は高く評価され、観客に彼女たちの葛藤と希望をリアルに感じさせた。さらに、ベン・ウィショーが演じるオーガストの存在が物語に優しさと対話の可能性を加え、作品全体に調和をもたらしている。
抑えた色調の映像と、独特の静寂を活かした音響設計も印象的で、観客を物語の核心へと引き込む力を持っている。

ネガティブまたは賛否が分かれる要素

90分間、1つの部屋で1つの話題を繰り広げる映画。至極の時間と捉えるか、退屈と捉えるかは人それぞれである。また、ハリウッド自体がいわゆる”ポリコレ”(人種や性別、宗教、年齢、障害の有無などによる差別や偏見をなくすための考え方)に寄り過ぎていると考える人は観る前に敬遠するテーマであるが、観ると感じることが多い筈だ。

こぼれ話

本作の原作はカナダの作家ミリアム・トウズが実際の事件に基づいて執筆した小説で、南米ボリビアの宗教共同体で発覚した性暴力事件が題材となっている。サラ・ポーリー監督は、原作のテーマを映画として再構築する際、女性たちの会話を中心に据えながらも、抑圧から解放への過程を繊細かつ力強く描き出した。

映画の色調はデジタル撮影後にわざと彩度を落とし、過去と現在の間にある曖昧な時間軸を表現。さらに、劇中で語られる話題の重さを反映するため、背景音楽を最小限に留める演出が採用されている。脚色賞を受賞した脚本も、原作に忠実でありながら映画的な緊張感を見事に追加している点が評価された。

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